お年寄りからの要求
日曜日, 3月 27th, 2016介護職はお年寄りからたくさんのことを学べる職場です。お年寄りと接する上で大切なことは、お年寄りからのリクエストの本当の意味を知るということです。お年寄りが、自分に「……をしてほしい」と言うとき、それはお年寄りの心からの「欲求」であることもあれば、依存心や介護者を単なるお手伝いさんと見て「要求」していることもあるのです。
介護職は高齢者を受容しなければいけないと言われますが、受容とは利用者の要求を無制限に受け入れることではありません。欲求と要求は似ているようで、全く異なるリクエストの形なのです。欲求は、自分のありのままの心の表現ですから、欲求が満たされた後に満足という終着点があります。ところが要求は、自己の欲望を他人に転嫁するときの表現です。欲望に際限はありませんので、一つの要求がかなえられても、さらに新しい要求を招くということになります。例えば、求められるままに希望通りの難しい料理を作ったとしても、今度は「別のものが食べたい」といった新たな難題を突きつけられて苦労することになるでしょう。
欲求に基づくリクエストに応えることは、生活支援の基本です。高齢者の「ありのままの欲求」を知るためには、高齢者の気持ちに自分の体全体で気づくことしかありません。「気づき」とは、自分の感性でお年寄りの心に寄り添うことによって初めて可能なのです。また、介護は「何かをしてあげる」という姿勢ではいつまでたっても成長できません。「相手を知ろう」という心からの思いやりがなによりも大切なのです。